そしてしばらくの後。
彼は「絶対に盗まれない方法」を開発したそうです。
何か、分かりますでしょうか。
答えは結構、予想外でした。
『1000円をカバンの上に置いておく』こと
なのだそうです。
………。
最初に聞いた瞬間、意味が分かりませんでした。
彼によると、目的は二つあるそうです。
「お金を上に置いておくことで、他のお客さんの注意を引き、泥棒が盗みにくい環境を作る」のが一つ。
また泥棒が盗む場合も、たとえカバンを盗んでも、その中に金目のモノが入っているとは限りません。
カバンを売るにしても、そこまで大きな額になることはないでしょう。
またカバンを盗む方が、モノが大きいため、捕まるリスク、見つかるリスクも高くなります。
そのため、「盗みやすい1000円だけ盗っていく」わけだそうです。
まぁ、彼の作戦、心理学的に意味がないとは言い切れません。
人は「価値が高いが、リスクや面倒さの大きいモノ」と、「価値は低いが、リスクや面倒さの小さいモノ」を前にした場合、たいていが後者を選ぶと言われています。
「・・・」
そして、しばらくのあと。
彼に聞くと、確かにカバンを盗まれることはなくなったそうです。
かわりに、1000円を持っていかれることは何度かあったとか。
それを見るたびに、彼は、
「あぁ、1000円で良かった」
と思ったそうです。
うん。
本人が良かったと思っているんだから、良かったんだろうと思います。
しかし。
繰り返しているうちに、彼は
その幸せ(?)も、長くは続きませんでした。
あるとき、カバンも1000円もなかったそうです。
それを目にして、彼はこう思ったそうです。
「その手があったか」と。
いや、あるよね、と思いました。
ていうか、思いつかなかったのが逆に奇跡だよね、と思いました。
「・・・」
結局、彼に、
「その1000円で、チェーンとかカギとか買って、テーブルにつけておけば?」
と言ったところ、
「その手があったか!」
と言われました。
その手、ありすぎ。